Arrow の一般可能性定理(続)

昨日の続き。
どうにも気持ちが悪い。倫理的に許せない!とか、政治的にどうこう、ではなく、数学的に納得できない(そんなに詰めて考えた訳じゃないけど)。
定理は、各プレイヤーの選好に対して非対称な関数を導入しないと結果が弱順序にならない、ということを言っていると思うんだが(ここから勘違いしているんだろうか?)、各プレイヤーの選好を変数として、各対象に対する全体の選好度を数値で返す評価関数(もちろん、各プレイヤーに対して対称な)を与え、その大小関係を結果として用いれば必ず弱順序になりそうなんだが…(数の大小関係は典型的な順序関係だし)。
具体例を挙げれば、次のような手順を考える。(記号は松井先生のものを少し変えた)

  • 各プレイヤーがそれぞれの選択肢について、選好順序と対応するような次のような点数付けを行う。(合計が6点になるようにしてある)
    • x>y>z → x:3,  y:2,  z:1
    • x>y〜z → x:3,  y:1.5,z:1.5
    • x〜y>z → x:2.5,y:2.5,z:1
    • x〜y〜z → x:2,  y:2,  z:2
  • 各選択肢に対する全プレイヤーの点数を合計する。
  • 上記の合計点の大小関係を元にグループ全体の選好を決定する。

少なくとも結果は必ず弱順序だし(数の大小で表せるから)、パレート最適性も満たしている(不等式の辺々を加えても向きは変わらない)。例えば、松井先生の証明中の例1について言えば、プレイヤー1は(x:3,y:2,z:1)、他のプレイヤーは(x:2,y:1,z:3)。他のプレイヤーが二人いる場合を考えると、グループ全体では(x:7,y:4,z:7 → z〜x>y)。結果は弱順序だし、xとyの間の関係についてパレート最適性を満たしており、性質1も3も満足している。プレイヤーが増えてもxとyの関係は変わらないし、zを好むプレイヤーが増すことを反映して、z>x>yという関係になるだけ。
この関数自体は各プレイヤーに対して対称だから、独裁者はいないはず。うーん。関数が対称→独裁者がいない、というのが短絡的?そんなことないよねえ…それとも関数が対称でも独裁者がいる、ということ?でもそれだと「独裁者」というより「グループの選好を代表するメンバーが存在する」と言っているに過ぎないよね…まあサザエさん一家のような集団の完全な平均値をパラメータとしてもつサンプルがいかなる集団にも必ず存在する、と読み替えれば(読み替えすぎです)それはそれで衝撃的かもしれないが…(星新一ショートショートにそんなのがあったな…それとも藤子・F・不二雄だったか…)
とはいえ、数十年の歴史を誇る定理にケチをつける訳ではなく、自分が納得したいだけなんだが…誰か教えてください。おながいします。弱支持提携のところにあてはめていけば矛盾が見つかりそうな気もするな…
(追記)ひょっとして、上の関数は性質2の「選択肢の対ごとに」というところに抵触するんだろうか?確かにxとyに対する配点のバランスはzとの関係において変わるからな…結局のところ、「選択肢の対ごとに判断」という、選択の方法の特殊性に「独裁者」が要求される余地があるのであって、選好の決定方法一般についてではない、ということですかね。3つの選択肢について同時に判断を求めれば何らかのやりようはあると。元記事(http://bewaad.com/20050920.htm#p01l)の前半に書かれているコンドルセパラドックスもそういうことを言っているようだし。3人の3つの選択肢に対する言及全体を見れば「ジャンケンが正解」と正しく判断できるよね。