ITER騒動

何だかタイミングを逸してしまったが、一応関係者でもあり、所感を書いてみる。
現状はまだ誘致場所は決まっていない。であるにも関わらずまたフランスは「もう我が国に決まった」と騒ぐ。いつものことだと思っていたが、こういうことでもあるらしい。

『仏投票に「逆転」期待 核融合炉』
 国民投票は、25カ国に拡大した欧州連合(EU)の憲法条約批准をテーマに5月29日に行われる。条約はEUの大統領や外相の新設などを盛り込み、発効には全加盟国の批准が必要。
 ITERとは直接関係ないが、シラク大統領はITER誘致とともにEU憲法の批准に熱心とされ、県では「条例が批准できなければシラク政権の求心力がなくなり、ITER誘致どころではなくなる」(幹部)とみている。
http://mytown.asahi.com/aomori/news01.asp?kiji=8011

そりゃフランス政府としては、もう誘致が決まったことにして「EUの結束のおかげで誘致できましたよ!投票に賛成を!!」と言いたいよな。以前からITERを欧州統合のシンボルにしたがっていると聞いてはいたが、今回はタイミングがばっちり合ってしまったのか。
しかし、まだ決まってはいないというものの、欧州は「単独でもやる」と息巻いており、一方で日本は単独(というか支持国を含む日米韓三国)による建設については財務省がいい顔をしていない現状では、何らかの理由で財務省が態度を豹変させない限り、誘致に関して先行きは暗い。
有利な条件を得たからいいじゃないか、という見方もある。確かにITERという事業を単独で見た場合、今回の「10%の資金負担で機器調達・人員の20%を確保」というのはいい取引だが、将来核融合炉を建設するために必要な技術を培うステップとしてITERを見た場合、日本誘致と非誘致では当然違いが出てくる。例えば、各種機器を統合して一つのシステムとして運用するための技術だ。これは当然誘致した国のメーカーに技術が蓄積されることになる。誘致国が組織に人員の40%を派遣することになることも、このような技術の掌握に有利に働くだろう。このような、ITERを誘致しないことで取りこぼす技術をどうやって拾うか。誘致を断念することで節約できた資金でそこを手当てできるなら、非誘致でもいいかもしれないが…