日本の常任理事国入り重ねて支持 シラク仏大統領

来日しているフランスのシラク大統領は28日、東京都内で開かれた「日仏フォーラム」で講演し、日本の国連安保理常任理事国入りへの支持を重ねて強調した。
http://www.asahi.com/international/update/0328/005.html

たいそう不思議に思うのだが、なんかこー、フランスが日本の常任理事国入りに賛成なのをありがたがったり不思議がったりする人が多いような気がするが、フランスには賛成する選択肢しかないと思うんですがね。

そもそも、安保理の改革論議の発端は、一部の国のみが常任理事国に与えられて いるような権利を享受していていいのか、という疑問から生じている。さらにいうと、地域的なバランスも、欧州から2ヶ国(ロシアも入れれば3ヶ国だが、あれは欧州じゃないとして…)というのは偏っている、 という批判もある。極論として、英仏を一つにくくって、「EU」1ヶ国が常任理事国になればいい、という議論もある(最近はどの国際会議でもEU加盟国はあらかじめ意見をすりあわせて来ており、加盟国はみんな同じことしか言わない。そんな国々が「25ヶ国の意見です」みたいな顔をするのはフェアなのか?という話)

そういう議論が進むと、英仏に限らず現常任理事国は非常に気まずい思いをする。国連加盟国の間で現在の枠組みに対する反感を煽られてしまうと、既得権益の維持に非常に苦労する(究極的には彼らが批准しなければ国連憲章は改正できないが、だからといってのほほんと座っていられるわけでもない)。だから、現常任理事国としては断固としてそういう議論を避けたい。特に、常任理事国以外の国の中でも最有力国である日本がへそを曲げて現体制の打破を叫び出したりすると国際世論の形成上大変不利。

また、EU内における対応という意味では、有力国であるドイツを安保理に押し込んでおかないと強力な反対者になってしまい、EU内で同じような議論を持ち出されてしまう。そのドイツは日本をはじめインド、ブラジルとスクラムを組んで常任理事国入りを狙っている。下手に日本に反対して、ドイツの常任理事国入りにまでけちをつけてしまうとフランスにとってこれまた非常にまずい。
そういう意味では、日本がドイツと組んで安保理に入り、現在の枠組みを肯定し、自分たちの既得権益を補強してくれるのはフランスにとっては渡りに船。諸手を挙げて賛成したいだろう。

というわけで、フランスが日本の安保理入りに賛成しても、それは自国の国益を考えればそれ以外に選択肢がないからであって、表面上感謝しておくのはともかく、日本としては借りを作ったと思う必要もなければ見返りを与える必要もないと思うのですが、どうなのでしょう。

同じことが、北方領土問題では強硬な態度を取っているにもかかわらず日本の常任理事国入りに賛成するロシアにも言えます。

さらにいうと、既得権益を保障してほしいという意味では同じ立場であるにもかかわらず、日本の常任理事国入りに強硬に反対している中国については、既得権益が損なわれるよりも、日本が常任理事国に入ってアジアのリーダーとして対当することの方がはるかに国益に反する、という、フランスやロシアとは異なる判断が働いているため、と思われます。